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3「葬儀場の非接触検温機」

※これは脚色してありますが、起こった現象は実話です。 ※霊の存在は科学的根拠がないとされていますが、故に存在しないという証拠にはなりません。肉眼では見えないものは沢山あり、例えば、赤外線、電波、素粒子、宇宙の果て、更にコロナウイルスも見えません。


3「葬儀場の非接触検温機」


都内の或る葬儀場に勤務していた頃、私はフロント係をしていた。 葬儀場には、葬儀待ちのご遺体で、安置だけをする預かりのご遺体を含めて、常に霊安室はいっぱいになっている。

その日は、告別式も通夜も、納棺式も、焼香来客もない、つまり誰も来ない暇な日だった。 葬儀場の会館内は、一階から三階までが葬儀式場とお清め所で、四階と五階が事務室等になっている。 そして霊安室は地下だ。 通夜がない日は午後6時に閉館するのだが、そういう暇な日は夕方から閉館時間までの時間帯は、スタッフは事務室で事務仕事をしていて、地下から三階には誰もいない。

つまり、そのときは、 エントランスホールの一階フロントには、私だけしかいなかった。

会館内に、スタッフ以外に誰かいるとしたら、それは何体ものご遺体だ。 その日の夕刻、 通夜がないので、閉館間近のスタッフたちは、やはり事務室で事務作業をしていた。

午後5時過ぎ、 フロント前に置いてあるスタンド型非接触式体温測定機が、突然作動した。

その体温測定機は、フロントの向きと同じ方向を向いている。 私はフロントカウンターに腰掛けていたので、体温測定機の後ろにいたことになる。 体温測定機が向いている先はエレベーターホールだ。歩行者や車が通る道路に面した入り口方向には向いていない。 非接触式体温測定機は、赤外線で近くにいる人の顔を検知し、顔を照らすライトが光り、モニター画面がつく。 手をかざしても作動しないし、背中、頭の後ろなどでも作動しない。ましてや遠くにいる人や、物体や自動車等には反応しない。

その日の夕刻は、通夜がないことから、フロントのあるエントランスフロアの照明は絞ってあり薄暗かったことから、体温測定機のライトが点灯したことが、体温測定機の後ろのフロントカウンターにいる私にも分かった。体温測定機の前が、つまりエントランスホールとエレベーターホールが僅か少し明るくなるのだ。

そして、何故か、体温測定機のライトは点いたまま消えない。

体温測定機の前に立ってみた。 私の顔が写った。 そういう意味では異常はない。 しかし、私が体温測定機の前からどいてもなお、ライトとモニター画面は消えない。 しばらく様子をみた。 おかしい。ライトもモニター画面もまだ消えない。点いたまま、まだ消えないのだ。 故障か? 体温測定機が向いている方を見た。 いや、何もいない。

というか、誰も居ない。

体温測定機が向いているエレベーターホールには誰も居ないのだ。 エレベーターも動いていない。 客もスタッフも居ない薄暗いエレベーターホール。エントランスホールにはもちろん私だけしか居ない。 その筈だ。 もしかしたら誰か居るのか。

私は、再度体温測定機が向いている方向を見た。じっくりと見た。 やはり誰も居ない。誰も居るはずがない。 反応するような何かは何もない。

体温測定機のライトとモニターがずっと点いたままであることにしびれを切らした私は、体温測定機の向いている方向を手で動かして変えてみた。 反応対象がないときは、体温測定機のライトはすぐ消えて、モニター画面もその後に消える。 じっと様子を伺っていたら、いつもどおりにライトもモニターも消えた。 その後には、同じような現象は再び起こらなかった。 その後は普通に作動し、それは故障ではなかったのだ。

体温測定機の向いていた方に、いったい何がいたのだろうか。 ちなみに、体温測定はできなかったようだ。

この世のものではないものには、体温が無いようだ。



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終活・相続・葬祭「法務」

行政書士鈴木俊行


「終活・葬祭法務ネットワーク協会代表」


東京都杉並区阿佐谷

杉並区役所隣り

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