2「寺院会館の自動ドア」
- 鈴木俊行
- 2022年9月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年2月1日
「寺院会館の自動ドア」
寒い冬の夕刻から、私が寺務長として勤務する寺院で、
或る檀家様の通夜が執り行われた。
山門の脇にある敷地入口には、葬儀や法要などの法事の為に使う会館が建っている。
寺院のある場所は、JRの駅に近く、そこは商店街からすぐの住宅街で、
目の前は片側二車線の車道が走っている。
夜、歩行者はほとんどない。
つまり、普通の都会の静かな街である。
午後6時、リンを打つ深い音が響きわたり住職による読経が始まった。
あたりは既に真っ暗。
その日は、通夜は一件だけ。
会館は2階建てで、式場とお清め所は2階にある。
遺族や会葬者は合わせて10人程度のこじんまりしたもの。
既に通夜に参列する予定の方は揃っている。
私は、まだ万が一会葬者が来ることに備えて1階の寺院会館入口内のフロアに設置した受け付けカウンターにいた。
会館入り口は、道路に面した自動ドアである。入り口を入るとすぐそこは風除室で、
会館1階フロアに入るためにはもう一つの自動ドアを越える。
私のいる1階フロアもさほど広くはなく受け付けカウンターからは、
その2つの自動ドアがよく見える。
読経が始まって程なく風除室内側の自動ドアが開いた。
そして閉まらない。
しかし、誰もいない。
しかも、入り口の自動ドアは開かなかった。
自動ドアは光線式または熱線式で、光や熱に反応して開く。
当寺院の自動ドアは光線式で、
たまに蝶やゴミに反応して開くことがあるが、そのようなことはめったにない。
入り口の自動ドアがまれに歩行者などに反応して開いても、
内側にある風除室の自動ドアは開いたためしがない。
30秒程度して自動ドアは閉まった。
そしてまた10分ほどして風除室内側の自動ドアが開いた。
もちろん入り口の自動ドアは閉まったままである。
会館のフロアには誰もいない。
私は受け付けカウンターに座ったまま動いていない。
おかしい。。。
30秒程度して自動ドアは閉まった。
10分後あたりにまた再び風除室内側の自動ドアが開いた。
入り口の自動ドアは依然として閉まったままである。
そしてまた、
30秒ほどして閉まった。
そう、
読経中の約50分間に4〜5回、風除室内側の自動ドアだけが開閉したのだ。
入り口外に歩行者はいない。フロアにも私以外誰もいない。
いったい、風除室内側の自動ドアは、何に反応したのか。
それも読経中規則正しく数度も。。
読経が終わると、ピタリと止んだ。
終活・相続・葬祭「法務」 行政書士鈴木俊行 東京都杉並区阿佐谷 杉並区役所隣り

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