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墓地側は無縁墓の撤去をする際に、墓埋法の無縁改葬許可を得れば何らトラブルは起こらないか?

墓地側は無縁墓の撤去をする際に、

墓埋法上の無縁改葬許可を得れば何ら問題ないか?


墓守ができなくなったことだけでなく、

菩提寺や霊園に管理費等の費用を払わなかったり、

墓を誰が引き継いでいるのか不明になったりした場合、

墓地の管理者側や自治体の条例が定めた一定の期間、

管理費等を払わずにいた墓は、


「無縁墓」

として扱われ、墓地の管理者に強制撤去(改葬)の準備がなされます。


撤去までには、墓地の管理者側や自治体の条例が定めた一定期間を要し、

墓地、埋葬等に関する法律施行規則に則った手続き(後記参照)を踏んで合祀墓に改葬されます。


がしかし、



●単に墓地埋葬法上で定められた手続きをとっていれば、問題なく無縁墳墓を改葬できるとは言えないという点に注意が必要です。

しっかりとした調査を行った上で手続きを進めないと、墓の使用者から損害賠償請求される可能性があります。

改葬許可を得たとしても、墓地使用者が有する墓地使用権(永代使用権)や墓石・遺骨の所有権は祭祀承継者に残ったままで、寺側に移るわけではありません。


●厚生労働省(旧厚生省)の通達によると、

墓地埋葬法施行規則第3条に、無縁墳墓に埋葬された死体などの改葬の取扱手続が規定されているが、これはあくまで改葬に必要な手続のみに得られるものであって、墳墓の所有権、地上権等の私法上の物権等の処置に関するものではない」とあります。

つまり、行政法(墓埋法)上において無縁墳墓と認定されて改葬手続きは可能になったとしても、民事上の権利関係については個々の管理規則や契約により決定すべきとされます。

縁故者・承継者を探して手続きを進めていかないと、後々のトラブルも起こりえるといえます。


墓地、埋葬法に関する通達 墓地、埋葬等に関する法律の施行に関する件 (1948年9月13日・厚生省発衛第9号事務次官から各道都府県知事あて通知)

<回答>

無縁墳墓に埋葬された死体等の改葬について

墓地埋葬法施行規則第3条に、無縁墳墓に埋葬された死体などの改葬の取扱手続が規定されているが、これはあくまで改葬に必要な手続のみに得られるものであって、墳墓の所有権、地上権等の私法上の物権等の処置に関するものではない。

したがって、無縁墳墓と認定されたものについては、その私法権の権利変更等を行う場合は必ずそれ等の規定によることが必要であること。




墓地、埋葬等に関する法律

第五条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。


墓地、埋葬等に関する法律施行規則

第二条 法第五条第一項の規定により、市町村長の改葬の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を、同条第二項に規定する市町村長に提出しなければならない。

一 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別(死産の場合は、父母の本籍、住所及び氏名)

二 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)

三 埋葬又は火葬の場所

四 埋葬又は火葬の年月日

五 改葬の理由

六 改葬の場所

七 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者(以下「墓地使用者等」という。)との関係

2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 墓地又は納骨堂(以下「墓地等」という。)の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面(これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面)

二 墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本

三 その他市町村長が特に必要と認める書類

第三条 死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂(以下「無縁墳墓等」という。)に埋葬し、又は埋蔵し、若しくは収蔵された死体(妊娠四月以上の死胎を含む。以下同じ。)又は焼骨の改葬の許可に係る前条第一項の申請書には、同条第二項の規定にかかわらず、同項第一号に掲げる書類のほか、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 無縁墳墓等の写真及び位置図

二 死亡者の本籍及び氏名並びに墓地使用者等、死亡者の縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し一年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に一年間掲示して、公告し、その期間中にその申出がなかつた旨を記載した書面

三 前号に規定する官報の写し及び立札の写真

四 その他市町村長が特に必要と認める書類




(トラブルに関する裁判例)

徳島市の寺に存置されている祖父母の墓が、「無縁墓」として撤去されたとして、同市の女性が寺に約540万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審にて、高松高裁が約370万円の賠償を命じた。 寺では法律で定められた手続き(無縁墳墓の改葬手続き)に基づき、立て札などで使用者から連絡を求め、市から改葬許可を得ていたが、裁判所は「手入れの跡から使用者の存在が強く疑われていたのに、調査義務を尽くさなかった寺には過失がある」と判断した。 2014年2月27日 判決(高松高裁)




●また、墓の使用者から損害賠償請求されることを防止する為に、管理規約を定め管理料の滞納があった場合の解約手続やその後の処理について契約書等において明確にしておくことはもちろん、

墓地使用契約書や、墓地使用約款、墓地使用規則などは定めていない、という墓について、

墳墓の所有権、地上権等の私法上の物権等の処置に関する当事者間の法律関係を解消し、トラブルを起こさずに無縁墳墓の改葬を進めるためには法律、民法の規定によって行うしかありません。

墓地埋葬法上の手続きと共に、縁故者の調査をしっかりと行い、その上で、民法第897条第2項により、墳墓の祭祀承継者を墓地経営者とする審判を家庭裁判所に申し立てる方法もあります。

墓地経営者が祭祀承継者と認められれば、墓地側で墓の処分を行うことに問題がないことになります。



民法

(祭祀に関する権利の承継)

第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める




●無縁墳墓改葬に関するトラブル


墓地を承継する者がおらず、無縁墓地(無縁墳墓)となった場合、墓地管理者は、一定の手続のもと、墓石を撤去したり、遺骨を合葬したりすることができます。

すなわち、墓石の撤去は遺骨の場所的移動を伴うので改葬に該当するため、改葬についての市町村長の許可を受ける必要があります(墓地、埋葬等に関する法律第5条)

また、縁故者及び無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し1年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札に1年間掲示して、公告するなどの手続を履践しなければなりません(墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条)

しかし、墓地管理者が上記手続のみを履践すればよいというものでもなく、本当に無縁墳墓であるか否かの調査を尽くす必要があり、無縁墳墓と軽信して、墓石を撤去したり、遺骨を合葬したりすると、墓地使用権者に対して損害賠償義務が発生することになります。






参考裁判例


東京地裁平成19年2月8日判決

遺骨を納め、墓地として使用してきた墓所を無縁墓と取扱って墓石を撤去し、第三者に新たなる墓地として使用させたとする不法行為に基づく損害賠償請求が認められました。


高松高裁平成26年2月27日判決

判決は、次のように述べ、寺にある祖父母の墓が「無縁墓」と判断され撤去されたとして、遺族の寺に対する、①慰謝料請求(約370万円)および②本件墓地に墓石を建立し、遺骨を安置することの妨害禁止を認めました。

「Bは、昭和46年8月頃、被控訴人から本件墓地の永代使用権を取得し、その上に墓を建立して、Aの遺骨の入った骨壺を埋葬し、B死亡後は、Cが祭祀主宰者の地位を承継し、本件墓地にBの遺骨の入った骨壺を埋葬しており、A及びBの葬儀、一周忌法要、三周忌法要等は被控訴人の前住職によって執り行われ、同住職は、平成11年春の彼岸まで、C宅に赴いて棚経を行っていたのであるから、△△家は被控訴人の檀家であったもので、被控訴人の前住職は本件墓地の使用者であるCの住所氏名及び連絡先を把握していたと認められる。しかし、被控訴人は、被控訴人墓地について、法15条1項、規則7条が定める墓地使用者等の住所氏名を記載した帳簿を備えておらず、他に本件墓地の使用者を記載した過去帳等の帳簿を有していなかったため、その後、前住職が病気になり、死亡したこともあって、後任の住職である被控訴人の現代表者は、前住職から、本件墓地について適切な引き継ぎを受けることができず、本件改葬行為当時、本件墓地の墓地使用者等を把握していなかったが、被控訴人が墓地使用者等に連絡できない状況にあったことについては、被控訴人に責任があるというべきである。そして、本件墓地の墓石はそれほど古い時期とはいえない昭和46年8月に建立されたものであり、現代表者も、平成13年か14年頃に本件墓地の墓参者を見たことがあり、その際に前住職の妻から同人が『△△』であることを知らされていたもので、さらに、本件墓地には本件改葬行為直前にも複数回にわたって墓参の形跡があったのであるから、本件改葬行為当時、本件墓地には依然として使用者又は縁故者が存在することが強く疑われたというべきであり、このような墓地を無縁墓地として改葬を行い、墓石を撤去処分し、骨壺や遺骨を搬出するには、さらに相当期間をかけて使用者の有無について調査を尽くす義務があると解される。したがって、被控訴人が本件墓地を無縁墓地であると判断して調査義務を尽くさないで本件改葬行為を行ったことには過失があるというほかなく、本件改葬行為は本件墓地の使用者であったCに対する不法行為を構成するというべきである。 これに対し、被控訴人は、法や規則の手続に従ったなどと主張するが、改葬を行おうとする場合には、法や規則の定める手続を実施しなければならないというにすぎず、これらの手続を履践したからというだけで、永代使用権を消滅させることができるものではない。また、被控訴人は、本件プレートを本件墓石に取り付けるなどして改葬を予告したこと、担当者が年6回1日常駐して改葬の対象となっている墳墓について聞き取り調査を行ったことや、数年間にわたりCから墓地管理料の支払がなされなかったことを指摘するが、墓地使用者が1年半程度の期間墓参せず、本件プレート等に気づかなかったり被控訴人から請求を受けないまま数年間管理料の支払をしなかったりしたことをもって、本件墓石の破壊・撤去という重大な結果を受忍すべきであるとはいえないし、これを過失相殺の事由とすることも相当ではない。被控訴人の上記主張はいずれも理由がない。」




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終活・相続・葬祭「法務」

行政書士鈴木俊行


「終活・葬祭法務ネットワーク協会代表」


東京都杉並区阿佐谷

杉並区役所隣り

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