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葬儀社と遺族側との間のトラブルを避けるには

更新日:2023年5月13日


●当サイト内の関連記事です。↓

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「葬儀社や寺院などへのご不満を伺います!」 



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葬儀に関する費用の内容が不明瞭であることや説明不足、遺族側の知識不足から起こる。

そこから金銭的トラブルに発展する可能性は高い。

お互いに嫌な思いはしたくない。

おのずと契約内容の明確化が求められる。できればキメの細かい見積書と適切な契約書をセットで作成することが肝要となる。


★トラブルの原因の例


(1)遺族側が、見積書に記載した内容について説明を受けていない或いは不明瞭であると主張し支払を拒否

 例1)競争が激化したことなどから葬儀費用の見積もりを安い金額で広告し、実際の葬儀施行でオプション追加。例えば家族葬40万円のプラン提示しておいて、実際に頼んでみると120万円とか。

 例2)互助会が35万円で葬儀全部できるような広告をし、実際は積み立てた金額だけでは葬儀費用が足りないという詐欺めいた事案。


(2)遺族側が、見積書に記載した費用とは別に追加料金が発生したことについて説明を受けていない或いは不明瞭であるとして支払を拒否

 例1)見積書に書いていない葬儀のBGMにピアノやシンセサイザーの生演奏が10万円だった。


(3)葬儀社が遺族側と事前打ち合わせをし費用等の説明をした際の相手と、打ち合わせをしていない喪主等の方が別にいる場合に、どちらに費用を請求したらよいか分からなくなる


(4)遺族側(契約者)が葬儀費用を支払うことができず、費用を回収することができない


(5)葬儀費用の支払期限を明確に決めていなかったために、遺族側が支払を先延ばしにする


コロナ対策費関連


(6)通常の葬儀費に加えて、新型コロナ対策費として衛生管理費を請求

(7)家族数名の葬儀だったが、三密を避ける為に小ホールより広い高額な大ホールで施行

(8)生前に葬儀費用の前払いとして30万円を支払っていたが、コロナ禍では不用な大規模な葬儀費用が含まれていたのでその分をキャンセルしたい


火葬場の費用の値上がり


(9)火葬場の火葬料金の値上げについて、結局費用を支払うのはお客さんだからということで、葬儀社は我関せずでまったく異論を説かない。


など



●葬儀費用は事前に確定しないうえ、見積書だけで契約


葬儀に関する契約を見積書で済ませてしまい契約書を作成している葬儀会社は少なくないことから遺族側とトラブルになりやすい。また、実際に葬儀が終わってみなければ費用が確定しないというトータル費用が不明瞭であるという側面もある。


●ドタキャンやコロナ


遺族が葬儀や出棺の時刻までに来ない場合や、火葬場に来ないなどのトラブルもある。


また、喪主がコロナに感染し発症したことにより葬儀を延期した結果、予め準備した料理や生花などが無用となり、遺体の保管費用が継続してかかったり、火葬場のキャンセルに費用がかかるなどといったケースもある。


このようなケースでの対応をどうするかについて、できれば契約書に盛り込み、万が一ときにトラブルにならないようにしておく必要がある。


●支払者は喪主?


葬儀契約の当事者が誰なのか(喪主とは限らない)分からなくなる場合もあるので、契約当事者を確定させることが非常に重要になる。


●契約書の重要性


適切な契約書を作成し、別紙として詳細な見積書を添付したうえで、契約書に見積書記載の費用を負担しなければならないことを明確にする必要がある。


見積書や契約書の記載内容が曖昧で不明瞭なものだとトラブルの原因となる。また、どのような場合に追加費用が発生するのかを事前に詳しく説明し見積書や契約書に明記することが必要。


見積書には、具体的なサービス名や商品名を記載し、具体的項目ごとに費用を明記し、どのような場合に見積書の記載内容を超えるサービスの提供が生じるのか、その場合については追加料金が発生する旨を明確にしておく。


(契約書記載例)

「甲(遺族側)は、乙(葬儀社)に対し、本契約の各条項に従い、本契約書添付の見積書に記載された内容の葬儀を依頼し、乙はこれを受託する。甲は、乙に対して、見積書に記載されていないサービスを依頼する場合は見積書とは別途に追加料金を支払う。」


2021年4月以降、商品やサービスの値段である「価格」を、消費税分を加えた税込み価格で表示する「総額表示」が義務付けられていることにも注意。


●宗派も明記


遺族側に菩提寺がないなどのケースで、僧侶について葬儀社手配に頼る場合、遺族側が依頼した宗派の僧侶が間違いなく来てくれるのかという問題がある。


葬儀契約については、どの宗派、どの寺院の僧侶で行うかということが重要であることにも注意が必要。


(裁判例/東京地方裁判所判決平成26年11月14日)

葬儀の依頼者が、自分の家族が信仰する宗派以外の僧侶により葬儀を行った葬儀会社に対して、葬儀費用の支払いを拒んだ事件


裁判所は、「一般に,葬儀を主催する僧侶の属性は,葬儀において極めて重要な事柄であるから,原告と被告との間で,本件葬儀を@宗の僧侶に主催させる旨の合意が成立した以上,この合意は,本件葬儀契約の内容となっていると認めるのが相当であり,他にこの認定を左右する証拠はない。したがって,原告が@宗の僧侶でないXに本件葬儀を主催させたことは,本件契約の債務不履行を構成するというべきである。」と判断して、葬儀会社の契約違反を認めた。


●連帯保証


葬儀の依頼者の支払能力に不安がある場合は、連帯保証人を立ててもらうことも検討すべき。


葬儀契約については見積額に追加料金が生じるなど結果的に費用が変動するので、民法の「根保証契約」に該当する可能性があるという点がある。


「根保証契約」とは、事前に負担額が決まっていない契約について、保証するケースをいう。


このような「根保証契約」については、民法により、連帯保証人の責任限度額(極度額)を定めなければ、連帯保証条項が無効になることが定められている。


(契約書記載例)

「丙は、甲の乙に対する本契約上の一切の債務について、見積書記載の金○○円を上限として連帯保証し、甲と連帯して本契約上の債務の履行の責任を負う。」


●支払方法


葬儀費用の請求については、弔問客の人数により飲食代や返礼品費その他の費用が変動するなどにより、後払いのケースが多いことから、契約書には、請求方法、支払期限、支払方法を必ず記載することが重要。


また、葬儀の依頼者の支払能力に不安がある場合、一定の金額を前払いで支払ってもらうという選択肢も検討すべき。


(契約書記載例)

「1 乙は、●条に基づき葬儀費用を算出し、請求書を甲に手交または郵便により送付するものとする。

2 甲は、葬儀の日から○○日以内に、葬儀費用を乙の指定する銀行口座に振り込んで支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。」


★法律上の対応


(例)

・事案の内容

夫が亡くなり、病院から紹介された葬儀社に依頼したところ、すぐに葬儀社の担当者が自宅に来ました。

直ちに打ち合わせとなり、提示された見積書によれば会葬者20人分で約180万とのこと。私は葬儀についての知識もなく高いか安いかも分からず迷っていると、担当者は急かすように「すぐ押印しないと式場と火葬場を予約できないばかりか、葬儀と火葬が1週間先になる」と言いました。内容を十分理解できませんでしたが、結局依頼してしまいました。

式当日には、司会や供花、食事に関して不手際があり、葬儀社に対して謝罪に来るよう求めたところ、葬儀社からは、10万円分を値引きすると言ってきました。

その他にも、 見積り外のものが追加料金に計上されていた(頼んでいない喪主の花や花束が発注されていた)といった問題があったのですが、依頼していないものは支払う必要はないと思います。どうすればよいでしょうか。

・法律的対処例

葬儀業者は経済産業省の所管ですが、葬儀業経営について法令上の規制はなく、許認可取得や届出の義務はありません。(一方で、国民生活センターに寄せられる葬儀に関する苦情や相談が増加しています。)

従って、許可等の取り消しといった処分を科すことはできないですが、本件については契約自体を消費者契約法第4条2項(不利益事実の不告知)により取り消すことが考えられます。

これは、追認することができるときから1年間か、契約を結んだときから5年間のどちらか早いほうの期間が満了したときに消滅するため注意が必要です。

また、見積りや契約に定めていない内容のことを無断発注したり、式当日の不手際等については、債務不履行(民法415条)に該当するとして相当額の減額を求めることが考えられます。


消費者契約法

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意又は重大な過失によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

三 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。

イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項

ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

四 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。

五 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。

六 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

七 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。

八 前号に掲げるもののほか、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が調査、情報の提供、物品の調達その他の当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、当該事業活動が当該消費者からの特別の求めに応じたものであったことその他の取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。

4 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。

5 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項(同項の場合にあっては、第三号に掲げるものを除く。)をいう。

一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの

三 前二号に掲げるもののほか、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情

6 第一項から第四項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(取消権の行使期間等)

第七条 第四条第一項から第四項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。


民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。



【国民生活センター相談事例(墓・葬儀サービス)】


国民生活センターには、

墓・葬儀サービスでは、「価格やサービス内容について十分な説明がない」「質素な葬儀を希望したのに高額な料金を請求された」などといった相談が寄せられています。


↑ 国民生活センターホームページ


●墓について

2019年 1,231件

2020年 948件

2021年 965件

2022年 186(前年同期 192)件

*相談件数は2022年6月30日現在


●葬儀サービスについて※

2019年 632件

2020年 686件

2021年 798件

2022年 128(前年同期 144)件

*相談件数は2022年6月30日現在


※「葬儀サービス」は、葬儀業者が行う葬式のほか、火葬場、斎場、僧侶の依頼等葬式に関連する相談も含む。


●最近の事例

「墓」

・親戚が建てた墓の納骨スペースに雨漏りがある。業者に伝えたが、「不具合はない」と言って対応してもらえない。

・付き合いの長い寺と永代供養の契約をしたが、管理が杜撰であり対応にも問題がある。

・母が霊園の墓地を購入した。高額だったのでキャンセルを伝えたが応じられないといわれ、納得できない。

「葬儀サービス」

・葬儀を行ったが、契約代金よりも追加代金の方が高額だった。納得できない。

・一括サイトで葬儀場のパンフレットを取り寄せ、綺麗な建物の寺に申し込みをしたが、実際の葬儀場は写真と異なる古い寺で、パンフレットの写真は葬儀を行わない別の建物だとわかった。

・葬儀をしたが、合意していないサービスの料金を葬儀会社に請求された。支払義務があるのか。


(以上、国民生活センターHPより引用)


以上



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終活・相続・葬祭「法務」

行政書士鈴木俊行


「終活・葬祭法務ネットワーク協会代表」


東京都杉並区阿佐谷

杉並区役所隣り

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