ブログで
という記事を書きましたが、
その続編です。
引取り手のない身元不明高齢者の遺体・遺骨が社会問題になっていますが、
その無縁遺体は地元自治体によって火葬されて遺骨は納骨施設に安置され、身元が判明しない限り戸籍に死亡の記載はされません(相続も開始しません)。
総務省によれば、2021年10月に全国の市区町村で管理・保管していた「無縁遺骨」は約6万柱あったことが確認されています。
その死亡したは、いつまでも戸籍上生きている扱いになってしまうのですが、それではさすがに都合が悪いことになります。
では、制度上どうするのか?
「戸籍の高齢者職権消除 (戸籍法44条3項・24条2項)」という方法によって、行政上は死亡した扱いにするわけです。
*高齢者消除では相続は発生しません。
戸籍法
第二十四条 戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、市町村長は、遅滞なく届出人又は届出事件の本人にその旨を通知しなければならない。ただし、戸籍の記載、届書の記載その他の書類から市町村長において訂正の内容及び事由が明らかであると認めるときは、この限りでない。
② 前項ただし書の場合においては、市町村長は、管轄法務局長等の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。
③ 前項の規定にかかわらず、戸籍の訂正の内容が軽微なものであつて、かつ、戸籍に記載されている者の身分関係についての記載に影響を及ぼさないものについては、同項の許可を要しない。
④ 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを知つたときは、遅滞なく届出事件の本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
第四十四条 市町村長は、届出を怠つた者があることを知つたときは、相当の期間を定めて、届出義務者に対し、その期間内に届出をすべき旨を催告しなければならない。
② 届出義務者が前項の期間内に届出をしなかつたときは、市町村長は、更に相当の期間を定めて、催告をすることができる。
③ 前二項の催告をすることができないとき、又は催告をしても届出がないときは、市町村長は、管轄法務局長等の許可を得て、戸籍の記載をすることができる。
④ 第二十四条第四項の規定は、裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上届出を怠つた者があることを知つた場合にこれを準用する。
高齢者職権消除がされたときは、戸籍上に「高齢者につき死亡と認定」の旨とその許可年月日が記載されます。
(例)
身分事項
出 生 【出生日】明治**年*月*日
高齢者消除【高齢者消除の許可日】平成@年@月@日
【除籍日】平成@年@月@日
・高齢者職権消除とは?
年齢が100歳以上で生存している可能性がきわめて低い高齢者の戸籍を、行政が職権で抹消する措置のことです。
身元不明の死者(行方不明者を含む)の場合、その方の戸籍は生きたままとなるのですが、このような状況は好ましくありません。そこで、年齢が100歳以上で亡くなっている可能性が高い行方不明の高齢者の戸籍を職権で消除できる制度が設けられているのです。
高齢者職権消除は、市区町村長が監督法務局長の許可を得て行います。
ただし、法律上義務付けられているものではありません。
高齢者の孤独死や身寄りのない高齢者の増加にともない、生死や所在不明のケースが多数していて、2010年の調査では、100歳以上の高齢者(戸籍上生存しているとされる方)は約20万人以上、120歳以上の方は約7万人、150歳以上の方は約800人いるとのデータがあるようです。
・高齢者職権消除によって相続は開始するか?
高齢者職権消除はあくまで戸籍の記載事項を整理するための便宜的措置で、これにより相続開始の効果を生じさせるものではありません。死亡の法的効果は生じないことから法律上は生きていることになるため、各種相続手続きはできません。(この点は、相続の開始原因となる認定死亡と異なります。)
高齢者消除の対象者となる人の相続を開始させたいときは、家庭裁判所へ失踪宣告の申立をして、死亡したものとみなしてもらう必要があります。(生死が7年間明らかでないときは、失踪宣告により、法律上死亡したものとみなされ、相続が開始されます。)
つまり、死亡の法律上の効果を発生させるためには、認定死亡か失踪宣告の手続をとる必要があります。
・戸籍を削除できる要件(割愛します)
・高齢者職権消除を相続開始原因である死亡に当たらない、とした家裁決定
松山家裁昭和42年4月19日決定・家庭裁判月報19巻11号117頁
(この決定は、高齢者職権消除を相続開始原因である死亡に当たらないとしています。)
「本件記録編綴の同人の除籍謄本には、その、身分事項欄に、『年月日時および場所不詳死亡昭和27年11月6日附許可を得て同月10日除籍』なる旨の記載があり、その記載は、~によれば、被相続人Aの戸籍消除事由は、大正5年2月3日民事第1、836号司法省法務局長回答、昭和6年2月12日民事第1、370号司法省民事局長回答、昭和24年9月17日民事甲第2、095号法務省民事局長回答等の先例に、いわゆる高齢者職権消除に基づくものであることが認められる。しかし、上記行政通達を根拠として、被相続人Aの戸籍に死亡の記載がなされても、それは単に戸籍行政上の便宜にもとづくものであつて、失踪宣告の如き法的効果を生ずるものでないことは、いうまでもない。したがつて、被相続人Aの死亡の事実または失踪宣告の審判のなされたことについて、何等の資料がない本件においては、同人の死亡による相続を前提として相続財産管理人の選任をすることはできないものといわなければならない。」
以上
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終活・相続・遺言・
墓・葬儀「法務」
行政書士 鈴 木 俊 行
東京都杉並区阿佐谷
杉並区役所隣り
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