「家墓」の処分はどうしますか? 「違法墓地」と「みなし墓地」<行政書士鈴木俊行>
- 鈴木俊行
- 2022年9月1日
- 読了時間: 7分
更新日:4月8日
違法墓地と、みなし墓地
●違法墓地の例
許可を得ずに自宅敷地に墓を設けてしまうものをはじめとして、
宗教法人と石材店等が手を組んで墓地経営許可をとったものの、
許可範囲を超えて墓地を造成して無断で販売するケースなどがあります。
墓地の運営の委託を受けた石材店等に対する宗教法人の名義貸しのような状況であり、
石材店等が利益を優先したために、許可範囲を超える墓地造成を行ったという場合などが該当します。
また、
昔ながらの墓では、
家の敷地に一つか数個の墓が建てられているなど、
個人の土地にあって、
墓地の名義が個人になっている墓地のことを「個人墓地」と言います。
ところで、これは違法墓地でしょうか。
●みなし墓地と違法墓地
個人墓地のほとんどは、
「みなし墓地」または「無許可墓地」に分類されます。
「みなし墓地」であれば合法、
「無許可墓地」であれば違法な墓地です。
墓に関する法律については
「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年5月31日法律第48号)があります。
この法律で「墓地」とは、
「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事の許可をうけた区域をいう」
とされています。
つまり、
墓地を持つ(経営する)ためには、
都道府県知事の許可を受けなければなりません。
ところが、この法律が施行される前から各地域に墓地はありました。
「みなし墓地」とは、
墓埋法が施行される以前から存在している墓地のうち、
以前から行政の許可を受けていたものを言います。
みなし墓地については、墓埋法で以下のように記載されています。
「この法律施行の際現に従前の命令の規定により都道府県知事の許可をうけて墓地、納骨堂又は火葬場を経営している者は、この法律の規定により、それぞれ、その許可をうけたものとみなす。」(墓地、埋葬等に関する法律 第26条)
これに対して「無許可墓地」とは、
墓埋法の施行以前以後にかかわらず、行政の許可を受けずに運営されている墓地を言います。
法律を知らずに家の庭に墓を作ってしまったという場合はもちろん無許可墓地になります。
加えて、
かなり昔から代々家にお墓があったけれど、
行政の許可は受けていなかったという場合も「無許可墓地」になってしまいます。
さらに、
地域の共同墓地についても法律施行前からあるものについても、
「無許可墓地」の可能性があります。
ところで、
墓埋法の施行以前からある無許可墓地については違法(6か月以下の懲役刑または5千円以下の罰金)ですが、
現実的に罰則が課せられることはないようです。
たとえ無許可墓地でも、
遺骨がすでに埋葬されている墓地を強制的に更地に戻すことは難しいうえに、
罰則を課したところで無許可墓地の根本的な問題解決にはならないからとされています。
実際には無許可墓地であっても、
昔からあったということから墓地台帳に記載がなくても墓地として扱われているところは全国にはたくさんあります。
そういった無許可墓地が墓地埋葬法に違反するからといって、
改葬して更地にするなどということは現実にはできないので、
行政としても大目に見ているというのが実情のようです。
墓地埋葬法施行後に作られた個人墓地は本来は違法ですが、
すでに墓地として長年使われている場合は、
自治体が相談に応じてくれる可能性があります。
自治体によっては「みなし許可に係る届出」などの書類を提出することで、
墓地埋葬法第26条にもとづく正式な「みなし墓地」として認めてくれるところもあるようです。
みなし許可に係る届出をする場合は、
昭和23年の墓地埋葬法が施行される以前からそこに墓があったということの証拠を提示しなければなりません。
ただし、
墓埋法施行後に、勝手に墓を作ってしまった場合は、罰則が科せられます。
自分の家の墓が個人墓地なのか、
さらにみなし墓地として許可されているかどうかは、
自治体の墓地台帳で確認できるので、不安がある人は一度確認しておくと良いでしょう。
なお、
法律上「墳墓」(墓)は、「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設」のことですので、
遺骨を埋葬せずに、墓碑だけ建てる場合は法律に違反しません。
●個人で墓地を持つということは法律上許されているのでしょうか。
墓地の扱いについては、
昭和23年に施行された「墓地・埋葬等に関する法律」で定められていますが、
具体的には、
厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」に規定があり、
それにより、新たに個人墓地を作ることは認めらないのが原則です。
つまり、
今から家の敷地内に個人墓地を作るのは、認められない可能性が高いのです。
厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」によって、
墓地の経営主体については、以下のように指導されています。
「墓地経営主体は、市町村等の地方公共団体が原則であり、これによりがたい事情があっても宗教法人又は公益法人等に限られること。」
●個人墓地が例外的に認められる?
「個人墓地」は、
昭和12年12月17日付警保局警発第154号通牒をはじめとする各種通達・通知において、明らかに特殊であると思われる場合
(たとえば、「山間等人里遠く離れた場所で、墓地が存在していない場合」)を除き、
新設の許可は認められていません。
つまり、
山間部などの人里離れた場所で墓地が全くないなどの事情があれば、個人墓地も認めるとするものです。
これについては、昭和二一年九月三日発警第八五号「墓地の新設に関する件」で以下のように通知されました。
*現在も有効かどうかは疑問です。
「山間等人里遠く離れた場合で、墓地の設け全く無く新設の必要ある場合は個人に許可するも支障ないこと。」
近くに墓地がない地域で、遠方に墓を作った場合に今後の管理が難しい場合は、
個人墓地の設置について自治体に相談してみると良いでしょう。
●個人墓地は祭祀承継の対象か?
個人墓地(みなし墓地)の名義人が死亡した場合は、
許可が失効して墓地の廃止許可処分が行われるとされています。
この原則を適用した場合、
一度墓地を廃止してから、祭祀承継者が再び墓地の経営許可を得ないと具体的に承継できないことになります。
しかし、
そもそも承継する前の使用者が誰だったのかが分からないなどといったケースが珍しくない上、手続きするための書類もほぼ残っていない場合があります。
そのため、現実的には祭祀財産の承継として扱われるのが現実的とされています。
ただし、
墓地の名義を変更してもらう必要があるため、
やはり個人墓地を承継した場合は、
役所に行って墓地台帳の記載を変更してもらうべきと考えられます。
参考:平成28年度厚労科研費研究に伴う「墓地の経営・管理に関するFAQ」Q1.[現行法施行前に許可された個人墓地の取り扱い]に関する質問
●みなし墓地の改葬(墓じまい)
通常の墓地埋葬法による改葬手続きによりますが、
個人のみなし墓地の場合は、墓の管理者は個人(自分自身)なので、
自分で埋葬(埋蔵)証明書を作成する必要があります。
先祖代々の墓で全ての記録を追えない場合は、その旨を役所に説明しましょう。
●個人墓地の売買をすることは可能か?
墓地を売ると墓地の経営者が変更されますが、
墓地を経営するには行政の許可を受ける必要があります。
墓地の経営許可は原則個人には出されないため、個人から個人への売買は現実的ではありません。
また、個人墓地を宗教法人などが買い取るということも、通常考えられません。
ただし、上記の通り、個人墓地の承継(祭祀主宰者の変更)は可能です。
●墓地を廃止すれば売買できる?
個人墓地を「廃止」すれば、
通常の土地と同様に売買できるようになります。
(登記上の地目の変更が必要になります)
●民間経営の霊園は合法?
石材店などの民間企業が運営している「民営霊園」の場合も、
名目上の経営主体は寺院などの宗教法人になっています。
●共同墓地は合法?
地域や集落で管理している「共同墓地」は、
個人墓地と同様にほとんどが「みなし墓地」のため合法ですが、
現在は、
地域住民で墓地を新たに作るということはできません。
cf. 墓地の種類には、運営・管理の主体によって分類されます。
運営・管理の主体が
地方自治体であれば「公営墓地」、
寺であれば「寺院墓地」、
民間企業であれば「民営霊園」、
地域や集落であれば「共同墓地」となります。
付記「家墓のある家屋の売買」
特に、
家墓(無許可、または「みなし墓地」)がある家屋の売買に関して、
墓じまいする際に、
上記記載内容は、
とても重要な問題となってます。
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行政書士 鈴 木 俊 行
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