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親の意思を尊重して「自宅の庭に散骨」したいが、法令違反にならないのか?

執筆者の写真: 鈴木俊行鈴木俊行

親の意思を尊重して「自宅の庭に散骨」したいが、法令違反にならないのか?


Q:親が死にました。随分と前に先祖の墓じまいをし、自分が死んだら、家の庭にでも撒骨すればよいと言っていましたし、私も新たに墓を建てようとは考えていないので、親の意思を尊重して骨を庭に撒骨したいのですが、こういう場合、勝手に撒くと、罰せられてしまいますか。


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自分の家の庭(自己所有の土地)に、親の遺骨を埋めたり、散骨したりすることが法的に問題ないのかについて、自然葬や手元供養と言われる葬送方法全般について以下にまとめました。


そもそも、墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)で定められている墓地・納骨堂以外に焼骨を納骨することは墓埋法等の法令には規定されていず、散骨することも定められていません。


最近は、海洋や山林等に散骨することが行われていますが、それらは自然葬と言われています。


●散骨とは、焼骨をパウダー状にして墓埋法上の墓地以外の海洋や山林に撒くこと(注意:パウダー状にした焼骨を地表に撒くこと、或いは海洋に撒くことであり、パウダー状にした焼骨を土中に埋めることは、墓埋法上の墓地である必要がある)

●埋蔵とは、焼骨を墓埋法上の墓地(墓)に納骨すること(墓のカロートに納めることや土中に埋めること)


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① 自然葬(法律上の規制は)


墓埋法

「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域にこれを行ってはならない。」

埋葬、焼骨の埋蔵・収蔵しか規制の対象になってない。

散骨というものは墓埋法に想定されていない葬送方法。

要するに墓埋法の規制の対象外であり、規制がない以上、散骨は墓埋法には違反しない。


海洋散骨/

*山林散骨も同様の問題がある(後記)


海は墓地でないので法律上グレーゾーン。

船をチャーターして近海に粉骨をまく。

(散骨する場所・方法には、死体遺棄罪や墓埋法その他規制の関係から制限が有る。)

原則として、許可や届け出義務は無い。

但し、条例により、散骨を禁止している自治体がある。


海に改葬により散骨する場合も、改葬許可証を市町村から貰う?

(ただし、散骨は、元の墓から別の墓に移動するという改葬の定義に該当しないため、改葬許可証は発行できないということが多い。自治体によって対応も異なり、墓から遺骨を取り出す際に、墓のある自治体に相談)

その際、受入証明書は散骨の事業主(散骨業者)が発行。

*自治体により多少手続きが異なる。


・散骨を行うに当たっては、


*墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年 法律第48号)、

*刑法(明治40年 法律第45号)、

*廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年 法律第137号)、

*海上運送法(昭和24年 法律第187号)、

*民法(明治29年 法律第89号)

*海洋汚染防止法(昭和45年法律第136号)

その他、「海上衝突予防法」「海上交通安全法」「港則法」などの海上交通三法のほかに「船舶職員及び小型船舶操縦者法」「船舶安全法」等の関係法令、

*地方公共団体の条例、

*日本海洋散骨協会ガイドライン等

を遵守することが求められる。


法務省刑事局見解(平成2年)

「刑法190条の規定は社会的習俗としての宗教感情などを保護するのが目的だから、葬送を目的として相当の節度を持って行われる限りは、死体遺棄罪には当たらない。」


厚生省(現厚生労働)生活衛生局見解

「散骨は、墓地埋葬法の立法当時、社会的事実がなかったためにあえて規定しなかったものと考えられ、公衆衛生上の問題を生じたり、社会通念上国民の宗教的感情を損なうような形で行われない限り、規制の対象にはならない」


・必ず粉骨(パウダー状)にする。


遺骨を白骨のまま散骨すると死体遺棄罪に問われる可能性。「節度を持って行う」とは、散骨という行為によって「社会通念上、死者に対する社会的習俗としての葬送・宗教感情」からみて迷惑をこうむる人がいないということ。


・粉骨とは


散骨業者の自主規制では、直径2mm以下に遺骨を砕くことになっている。

骨だということがわかる状態で散骨すると、死体遺棄事件に発展する可能性がある。


・粉骨する行為は遺骨損壊罪にならないか


「社会通念上葬祭と認められる態様」であれば、遺骨を撒く目的で粉骨にする行為は遺骨遺棄罪にはならない。


刑法

第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。


*散骨に関する条例やガイドラインのある市町村


散骨に関する条例:北海道『長沼町さわやか環境づくり条例』

散骨に関する条例:北海道『要綱第1号(七飯町の葬法に関する要綱)』

散骨に関する条例:北海道『岩見沢市における散骨の適正化に関する条例施行規則』

散骨に関する条例:長野県『諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例』

散骨に関する条例:埼玉県『秩父市環境保全条例』

散骨に関する条例:埼玉県『本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例』

散骨に関する条例:神奈川県『湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例』

散骨に関する条例:静岡県『御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例』

散骨に関するガイドライン:静岡県『熱海市海洋散骨事業ガイドライン』

散骨に関する指針:静岡県『伊東市における海洋散骨に係る指針』

散骨に関する条例:静岡県『三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例』


樹木葬/

霊園で扱うところもある。墓石・骨壺を用いず樹木を墓標とする。


宇宙葬/墓石を立てるより安価


デジタル墓・ネット墓・バーチャル墓(メタバース)/

遺骨を供養する為の埋め墓などは別途必要になるので自然葬とは別のカテゴリー。


② 手元供養、自宅供養とは(法律上の規制は)


ペンダント、お守り、フォトスタンドなどにして供養。

法律上は、焼骨を埋蔵・収蔵せずに、骨壺のまま仏壇に祀る、或いは粉骨にして手元で供養することを制限する規定は無い。(墓埋法など)


③ 墓を造らなかった。山や庭に埋めた(散骨した)。

(山林や自宅の庭に埋葬(散骨)し、墓を建てるなど)


・法律上の規制は


あ)墓埋法・条例

自宅の庭に焼骨を埋蔵する為の墓、納骨施設は作れない(土葬も不可)。

埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない。

焼骨の収蔵は、納骨堂にしかできない(手元供養を除く)。


い)刑法

死体遺棄罪(刑法190条)

遺体を放置して火葬しない、埋葬しない。

(遺骨の遺棄も同じ。)


う)その他、前述参照


*死体遺棄

葬祭に関する社会の秩序を維持するために、死体を場所的に移転して放置したり、葬祭をなすべき責任のある者が葬祭をなさずに放置することによって成立する。

Cf,葬祭義務者・埋火葬義務者


*遺棄とは? 埋火葬義務者は?

遺棄とは、「社会通念上埋葬と認められないような方法で死体等を放棄すること」と解されている。

殺人犯が、殺した被害者の死体を山中に捨てたり、埋めたりするのが典型的な例。 殺人犯が、路上で、被害者を殺し、そのまま放置して立ち去った場合については、遺棄には該当しないと思われる。

原則として、死体を移動させる行為が必要。

例外的に死体を移動させなくても死体遺棄罪に該当する場合は、死体を埋葬する作為義務を負う者に限られると解される。

Cf,葬祭義務者・埋火葬義務者


*墓地とは

・墓埋法の規定

・墓地については判例により、「墳墓と社会通念上一体の物ととらえて良い程度に密接不可分の関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地」に限ると解釈されている(祭祀財産)。


●「散骨」に関する法律問題のまとめ


1 最近、遺骨の「散骨」、すなわち火葬した遺骨を墓に埋蔵等せずに土地や海に散布することが適法か否かが問題になっている。 


2 遺骨の埋葬等を定めた法律に「墓地、埋葬等に関する法律」がある。

同法第4条は、埋葬または焼骨の埋蔵は墓地以外の区域に行ってはならないと規定。

更に、同法第5条は、埋葬、火葬又は改葬を行うものは市町村長の許可を受けなければならないと規定。

しかし、同法は「散骨」については規定してない。

そうすると「散骨」は同法が予想した埋葬方法ではないことになる。 


3 次に「散骨」が刑法第190条の「遺骨遺棄罪」に該当するか否かが問題になる。

この点に関して、法務省は非公式に「節度をもって行われれば刑法の遺骨遺棄罪には当たらない。」と表明している。

そうであれば「散骨」が節度をもって行われれば刑法第190条の「遺骨遺棄罪」には該当しないものと思われる。 


4 仮に「散骨」が「刑法」や「墓地,埋葬等に関する法律」等に抵触しないとしても「散骨」を行う方法や場所に関する法律問題がある。


★つまり、

散骨(自然葬)について、

厚労省は「散骨は、墓地埋葬法の立法当時、社会的事実がなかったためにあえて規定しなかったものと考えられ、公衆衛生上の問題を生じたり、社会通念上国民の宗教的感情を損なうような形で行われない限り、規制の対象にはならない」とし、法務省は「刑法190条の規定は社会的習俗としての宗教感情などを保護するのが目的だから、葬送を目的として相当の節度を持って行われる限りは、死体遺棄罪には当たらない。」「今すぐ遺骨遺棄罪で摘発することは考えていない」としている。

「刑法190条は『遺骨に対する社会的風俗としての宗教感情を守ること』を法益とするものであるから、散骨は外形的には違反するが、遺骨を棄てる目的ではなく、あくまで葬送を目的として行うものであり、相当の節度をもって行うならば違反とはならないであろう」と、法務省・検察は、散骨を直ちに摘発することは考えていないようである。


 A) 山林その他の他人の土地

「散骨」を他人の土地に、その土地の所有者の承諾無く行った場合は不法行為となり損害賠償請求される可能性がある。 また、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第16条の廃棄物の投棄禁止の規定に抵触することも考えられる。


  B) 自己所有地

自己所有地に「節度をもって」散骨をする場合の問題。

その場合、自己所有地を事実上墓地と同様に使用することになるので、隣接ないし近隣の土地所有者との間で相隣関係の問題が発生してくる恐れがある。

また、「散骨」した自己所有地を第三者に所有権移転等の権利移転をする場合、その土地に「散骨」した事実を予め告知しないと、所有権移転等を受けた第三者から告知義務違反等を理由として契約解除及び損害賠償請求されることも考えられる。 


  C) 海洋

海に「散骨」する場合には、条例その他の法令に違反しない場合でも、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」第10条の船舶からの廃棄物の排出の禁止規定に抵触する恐れがある。

特に、海水浴場や魚介類の養殖場、及びその付近に「散骨」した場合は、海水浴場経営者や養殖業者の業務活動に対する妨害行為として損害賠償請求される恐れがある。



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Q: 親が死にました。随分と前に先祖の墓じまいをし、自分が死んだら、家の庭にでも撒骨すればよいと言っていましたし、私も新たに墓を建てようとは考えていないので、親の意思を尊重して骨を庭に撒骨したいのですが、こういう場合、勝手に撒くと、罰せられてしまいますか。


A:自己所有の土地(家の庭)に墓を建てたり埋葬したりすることはできないが、パウダー状にした焼骨を散骨(地表面に撒く)することは、公衆衛生上の問題を生じたり、社会通念上国民の宗教的感情を損なうような形で行われない限り、かつ葬送を目的として相当の節度を持って行われる限り、直ちには違法とはならないが、相隣関係や「散骨」した自己所有地を第三者に所有権移転等の権利移転をする場合にあっては注意が必要。



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終活・相続・遺言・墓・葬儀「法務」

行政書士鈴木俊行


「終活・葬祭法務ネットワーク協会代表」


東京都杉並区阿佐谷

杉並区役所隣り

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