葬送・供養方法の在り方が多様化してきているが、遺体を自宅で保管して供養することは可能か?
- 鈴木俊行
- 2023年3月19日
- 読了時間: 4分
葬送・供養方法の在り方が多様化してきているが、遺体を自宅で保管して供養することは可能か?
葬送感情や供養に関する有り方が多様化している。
墓じまいや改葬などもそれの流れだが、
従来型の墓に埋葬・納骨しなくても良いのではないかと考える方も増えていて、
海洋散骨や樹木葬などはその典型。
ところで、
亡くなられた方の遺体を火葬せず、自宅で保管・安置する供養方法は認められるのだろうか?
(*火葬後の遺骨を自宅で保管・供養するものとは違うことに注意)
火葬・埋葬、納骨の義務はあるのだろうか?
なにしろ、戸籍法の決まりで、死亡届は出さないといけないことにはなっている。
戸籍法
第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から七日以内(国外で死亡があったときは、その事実を知った日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
問題はその後。
葬儀や火葬・埋葬、納骨は必ずしなければならないのか。
必ずしなければならないのなら、いつまでか。
墓地、埋葬等に関する法律にある規定は次のとおり。
墓埋法
第二条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。
2 この法律で「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。
3 この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。
4 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。
6 この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。
7 この法律で「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。
第三条 埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。
第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
2 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。
第九条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
2 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治三十二年法律第九十三号)の規定を準用する。
つまり、墓埋法上での規定は、
死後24時間を経過しないうちに埋火葬をしてはならない、ということと、
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域にしてはいけない、焼骨の収蔵は納骨堂にしなければならない、ということ、
そして、火葬は火葬場以外の施設でこれを行ってはならない、ということが規定されている。
さらに、死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない、ということである。
遺族がいるのに、葬儀をしないことはともかく、
埋火葬・納骨をしないということは、
場合によっては
墓埋法第九条 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
によって地元自治体が埋火葬をすることになる。
「死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないとき」、というのは、
遺族がいるのに埋火葬・納骨をせずに自宅保管・安置をしているケースも含まれるのだろうか。
少なくとも、いつまでに埋火葬・納骨をしなければならないという規定はない。
さて、問題となるのが、刑法の規定である。
刑法
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
この規定による死体遺棄罪は、
葬祭に関する社会の秩序を維持するために、死体を場所的に移転して放置したり、葬祭をなすべき責任のある者が葬祭をなさずに放置することによっても成立する。
遺棄とは、社会通念上、埋葬と認められないような方法で死体等を放置することと解されているのである。
とはいえ、
刑法の規定によっても、いつまでに埋火葬をしなければならない、ということは明確にはならない。
葬送・供養方法の多様化が進んでいるとはいえ、
法令によって、この件以外にもさまざまな制限があるのである。
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終活・相続・葬祭「法務」
行政書士鈴木俊行
「終活・葬祭法務ネットワーク協会代表」
東京都杉並区阿佐谷
杉並区役所隣り
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