葬儀費用は誰の負担? 初七日や四十九日の費用は?
- 鈴木俊行
- 2022年10月24日
- 読了時間: 5分
更新日:2月18日
揉めることが増えてきたような気がする。「葬儀費用の負担は誰?」
●葬儀費用は誰が負担するのか?
かつては、
家督を相続する者や長男などが喪主となり、
当然のように親の葬儀費用は負担していただろう。
今でも、
葬儀代は、喪主や長男が当然に負担すべきと考えている人が多いのかもしれないが、、、、
相続人間で葬儀代の支出でもめると、
後々トラブルになる。
家族制度が崩壊して、「イエ」の相続とか、家族・親族といったつながりが希薄になりつつある今日、
相続とは相続人間で解決すべき遺産の引継ぎであり、故人や先祖の祭祀に関してはあまり関心がない。
そもそも、葬儀費用は相続開始(被相続人の死亡)後に生じるものであるため、
相続財産とは別のもので、相続財産から当然に支弁できるという関係にはない。
また、葬儀費用を誰が負担すべきであるかという問題について成文化された法律はなく、
一般的に確立された社会通念や法的見解というのも見当たらない。
・相続財産から控除
相続人全員が納得のもと、計算上、相続財産から葬儀費用等を控除し、遺産分割協議を行うことができれば一番スムーズ。(このケースは、事実上相続人で葬儀費用を按分負担することになる)
・喪主(施主)が負担
この場合でも、遺産分割に於いて喪主の経済的負担を考慮。
・裁判所の扱いも一律ではない
あ)喪主負担
い)相続人負担
う)相続財産負担
え)慣習・条理により決める
喪主負担や、相続人負担は文字通り、喪主や相続人が負担するというもので、
相続財産負担は、相続財産から葬儀費用を控除するとする見解(結局は相続人負担となる)。
慣習・条理により決めるというのは、近年ではあまりとられていない見解のようだ。
東京地裁の判決でも、
平成17年4月28日判決では、え)の見解、
平成17年7月20日判決では、う)の見解
平成18年10月19日判決では、い)の見解
平成27年12月3日の判決では、あ)の見解
を採用しているものと思われる。
このように、裁判所の中でも見解が一致していない。
**** 裁判例 ****
(必ずしも相続人が葬儀費用を負担することにはならない)
●相続人ではない親族により主宰された葬儀の費用について、当該費用を相続人に請求し、裁判所はこれを棄却した例。
葬儀費用の負担に関する裁判例(名古屋高判平成24年3月29日(平成23年(ネ)第968号)貸金返還等請求控訴事)。
(事案の概要)
亡Aは,平成21年12月に死亡し,その相続人は,長男Y1及び二男Y2であった。Xは,亡Aの兄弟であったところ,喪主として亡Aの葬儀等を主宰し,通夜,葬儀,火葬及び初七日の法要を行った。
そこで,Xは,葬儀費用は相続財産又は相続人が負担すべきであるなどと主張して,Yらに対して,①Xが支出した葬儀費用について不当利得返還請求をした。
その他にも,Xは,亡Aが締結していた賃貸借契約の解約をし,原状回復費用として10万1588円を支出したとして,Yらに対し,②事務管理に基づく費用償還請求権に基づき,それぞれ5万円余の支払を,③Xが,亡Aの債務を立替払いしたと主張して,Yらに対し,それぞれ8000円余の支払を,④Xが,亡Aに対し,2回にわたって計100万円を貸し付けたとして,金銭消費貸借契約に基づき,Yらに対し,それぞれ50万円の支払を求めた。
原審は,②③を認め,その余の請求を棄却したため,Xは敗訴部分を不服として控訴した。
(裁判所の判断)
本件においては,特に,Xが亡Aの葬儀費用を支出したとして他の相続人らに返還請求を求めた点に対する判断を取り上げたい。
裁判所は,一般論として,葬儀費用とは,死者の追悼儀式に要する費用及び埋葬等の行為に要する費用と解されるが,亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式に要する費用については同儀式を主宰した者,すなわち,自己の責任と計算において,同儀式を準備し,手配等して挙行した者が負担し,埋葬等の行為に要する費用については亡くなった者の祭祀承継者が負担するものと解するのが相当であるとした。
そして,本件については,亡Aは予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡Aの相続人であるYらや関係者であるXらの間で,葬儀費用の負担についての合意がない状況において,Xが,亡Aの追悼儀式を手配し,その規模を決め,喪主も務めたのであるから,Xが亡Aの追悼儀式の主宰者であったと認められ,Xが亡Aの追悼儀式の費用を負担すべきものというべきである。他方,亡Aの遺骸,遺骨の埋葬等の行為に要する費用については,亡Aの祭祀を主宰すべき者が負担すべきものであるが,亡Aの祭祀を主宰すべき者については,亡Aにおいてこれを指定していた事実は認められないから,民法897条1項本文により,慣習に従って定められるべきものであるが,亡AにはYらという二人の子があるものの,20年以上も親子の交渉が途絶えていた状況である一方,兄弟であるXらとの間に比較的密な交流があった事情が認められることも考慮すると,亡Aの祭祀を主宰すべき者を亡Aの子であるYら又はそのいずれかとすることが慣習上明白であると断ずることはできず,結局,本件における証拠をもってしては,亡Aの祭祀を主宰すべき者を誰にすべきかに関する慣習は明らかでないというほかない。そうすると,家庭裁判所で,同条2項に従って,亡Aの祭祀承継者が定められない限り,亡Aの遺骸等の埋葬等の行為に要する費用を負担すべき者が定まらないといわざるを得ない。
したがって,XがYらに対し,葬儀費用を請求する法的根拠はないというべきであるとした。
●初七日、四十九日の法要の費用は葬儀費用?
・初七日法要は、
葬儀ではなく「供養に分類される」ため葬儀費用に該当しない。
ただし、初七日法要を「通夜・告別式と同時」に行っており、葬儀社からの請求書で代金が区別されていない場合は、通夜・告別式に含められることになる。
・四十九日の法要の費用は、
祭祀承継者の負担であって、葬儀費用に含まれないとする裁判例もあるが、四十九日の法要の際に納骨する場合には葬儀費用に含まれるのではないかという見解もある。
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終活・相続・遺言・
墓・葬儀「法務」
行政書士 鈴 木 俊 行
東京都杉並区阿佐谷
杉並区役所隣り
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