葬儀社が教えない葬儀・葬式の打ち合わせ時に必要な法務等 <行政書士鈴木俊行>
- 鈴木俊行
- 4月17日
- 読了時間: 12分
更新日:7 日前
葬儀社が教えない葬儀・葬式の打ち合わせ時に必要な法務等
葬儀・葬式(通夜式、葬儀式、告別式、初七日)についての葬儀社との打ち合わせは、
時間的余裕も精神的余裕もない中で行わなければならないでしょう。
トラブルを避けるためにできるだけ予備知識、準備をもって臨んでください。
仏式の葬儀について法的な関連事項を含めてご説明します。
① 宗派は何か、菩提寺の有無、生前戒名の有無等について確認
菩提寺が無い場合は、葬儀社に相談してください。葬儀社と提携している希望する宗派の僧侶を派遣してくれます。
僧侶を呼ばない葬儀の形(自由葬)もできますので、葬儀社にその旨伝えます。
宗教的色合いのない自由葬の場合は、戒名・位牌を作らないこともありますが、
墓地管理者に納骨の際に戒名・位牌が不要であるかを確認します。
なお、生前戒名が有る場合、その旨を菩提寺や葬儀社に伝えます。
菩提寺がなく、また納骨せずに手元供養や海洋散骨をする予定などで、墓地が決まっていない場合や、これから墓地・霊園等を探す場合、墓石を購入する場合も葬儀社に相談してください。
そもそもですが、埋火葬の義務はありますが、葬儀・葬式をしなければならないとか、焼骨を墓地に納骨をしなければならないという法律上の義務はありません。
② 葬儀の規模を決めて葬儀費用の見積もりを検討し、お布施の金額についても確認
葬儀契約、葬儀費用を確認して見積書や葬儀契約書などといった葬儀契約の詳細な内容を法的な書面にしておくことが望ましいと思います。
なお、食事代や返礼品の費用、火葬場までのマイクロバス代などは、会葬者の人数や内容によって変動しますので注意が必要です。また、火葬場での費用や、葬儀社手配の住職を呼ぶ場合のお布施などの宗教費が見積書に入っているかを確認しましょう。
互助会の積み立てをしていた場合は、その額との差額精算を確認してください。
希望する葬儀の規模・内容等については、はっきりと葬儀社に伝えて、食い違いのないようにしましょう。
なお、菩提寺がある場合の住職にお渡しするお布施は、仏法上、葬儀や法事、法要に招いた僧侶へのお気持ちであって寄附にあたり、仕事の対価として支払う報酬・料金ではありません。決まった金額もありません。本来、寺院側から料金を示すのは不当です。ですので領収証も発行されません。ですが、あらかじめ住職や葬儀社にお布施の金額の相場等について相談されるのが良いと思います。
お布施は、相続税の計算上で控除できますので、自分でメモとして「故人の名前、寺院名、住職名、寺院の住所・電話番号、葬儀の日にち、お布施の金額」を書いておきましょう。
③ 一般的に葬儀費用・関連費用には以下の項目がありますので見積で確認しましょう。
*以下は一例です。地域の習俗、宗教・宗派により異なります。
大きく分類すると、「葬祭費」「接待費」「宗教費」の3つになりますが、葬儀社ごとに項目の出し方はそれぞれだと思います。
●葬儀場関係
・式場使用料
・祭壇料
・花祭壇の場合の費用
・提灯代
・看板、看板下や提灯下の飾花の代金
・花輪、供花、枕花、お別れ花代金
・果物(盛籠)などのお供え費用
・枕飯、枕団子の費用
・式場設営費
●遺体の保管費用
●遺影作成代
●死亡届の提出手続き代行、埋火葬許可証の取得手続き代行料金
●メイク、湯灌、エンバーミング、法衣の費用
●納棺式を行う場合の費用
●運賃
・寝台車・霊柩車代金と運転手への心づけ
・マイクロバス等の費用と運転手への心づけ
・住職を葬儀場や火葬場へ送り迎えする為のハイヤー等の運賃と運転手への心づけ
●火葬場費用
・火葬料
・待合室費
・骨壺代金
・宰領や火葬場職員への心づけ
●飲食費
・通夜ぶるまい代金
・精進落し代金
●宗教関係
・読経料(枕経・通夜・葬儀・納骨法要~初七日)
・戒名料
・お車代・お膳料
●葬儀社スタッフのサービス料
●葬儀社スタッフへの心付け
●受付、会計等のお手伝いさんに対する謝礼
●改葬御礼の返礼品代金
●礼状の作成費用代金
●後飾り祭壇、供花の代金
●香典返し費用
など
*その他
●仏壇が必要ならその代金
●墓の永代使用料・墓石代や納骨堂、樹木葬の費用や永代供養料など
●海洋散骨などの自然葬費用
●ペンダント等での手元供養をする際の加工料
●粉骨費用
●初七日、四十九日、納骨、年忌法要などの法事費用
など
④ 互助会積み立てや、生前契約割引、追加費用(オプション)に注意
互助会の会費として積み立てをしていた場合は、その額との差額精算を確認してください。また、生前契約割引の契約の場合も、値引き額等について書面にしておきましょう。
なお、葬儀施行上の諸事情によって当初予定していなかった費用が加算される可能性もありますので、その場合の見積もり概算も書面にしておきましょう。
⑤ 喪主を誰にするか決める
喪主は、通常は法律上の祭祀承継者(祭祀主宰者)が務めることが多いですが、法律上の決まりはありません。
とはいえ、故人の弔いや供養、墓の管理等をすることになる祭祀承継者を誰にするかを決めておくことが後々のトラブルを避けることに繋がります。
その上で、葬儀の主宰者(喪主、場合によって施主)が葬儀社と直接打ち合わせをすべきでしょう。
葬儀社側からすれば、葬儀施行契約の当事者が祭祀承継者である必要はありませんが、後々のトラブルを避ける為に喪主(祭祀承継者)が誰であるかはっきりさせておきましょう。
祭祀承継者を誰にするかについては、遺言による方法、または被相続人からの生前指定、相続人による協議により決まりますが、法的な書面にしておくことが望ましいと思います。
定まらない場合は家庭裁判所の審判で決めることになります。
このような法的なことは、葬儀社では教えてくれません。
祭祀承継者を誰にするかについて、民法では次のような規定があります。
民法
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
⑥ 葬儀等の費用の負担者は誰か話し合い決めておく
喪主が葬儀費用、初七日や四十九日法要費用、納骨費用等を負担しなければならないという明文での法律上の決まりはありません。
ですが、葬儀を葬儀社に依頼するまでに、相続人の間で葬儀等の費用負担者を決めておきましょう。
相続人が各自相応の割合で負担することも有り得ますが、祭祀承継者を誰にするかを決めるのと同時に、葬儀等費用の負担者と負担割合を決めておかないと、後々訴訟等のトラブルが発生する可能性があります。
それらは法的な書面にしておくことが望ましいと思います。
葬儀等費用に関する訴訟等についての裁判例は様々ありますが、ここでは割愛致します。
このような法的なことは、葬儀社では教えてくれません。
⑦ 菩提寺への連絡
納骨先である菩提寺(先祖の墓)が有る場合は、死亡の連絡と枕経や通夜・葬儀、初七日法要等の依頼をし、戒名や葬儀等の日程及びお布施の金額について住職に相談します。
通夜・葬儀・告別式、初七日、納骨、食事の概要や日程については、喪主の独断ではなく遺族の中心の方の了解も取っておきましょう。
⑧ 通夜・葬儀・告別式、初七日の日程をきめる
住職の都合や火葬場、葬儀場の空き状況を確認して予約します。
食事、マイクロバス、霊柩車等の予約も必要ですが、葬儀社が手配してくれます(例外有り)。
通夜・葬儀・告別式、初七日、納骨、食事の概要や日程、およその費用については、喪主の独断ではなく遺族の中心の方の了解も取っておきましょう。
⑨ 死亡の連絡をする。参列者の人数を決める。お手伝いさんを手配する
近親者や親戚、友人知人等必要な範囲に死亡の連絡をして参列者の人数を見積もります。しかし参列者の人数はことの性格上、はっきりしないことが多いので、人数の増加は葬儀等の費用に変動が生じます。このことは注意が必要です。
その場合に備えて、人数が増えるなどの変動が有った場合の追加費用について、書面にしておくことが重要です。
また、身内以外の方に受付や会計などのお手伝いを頼む場合はその手配をします。
⑩ 死亡届・死亡診断書、死亡届人の印鑑、副葬品、遺影写真用のデータ、故人の愛用品を用意して、役所手続き(死亡届を役所に提出し、埋火葬許可証の申請)をする
ちなみに、死亡届を書くことができる人など死亡届に関する法定事項は戸籍法で定められています。
戸籍法で定められている死亡届出義務者、死亡届出資格者以外の人が書くことはできません(故人の家族等が代書することは可能です。業務としては、行政書士、弁護士は代書と提出代理をすることができます。ただし、届出人の署名は必ず届出人が自筆しなければなりません)。
葬儀社が死亡届を代書することはできませんのでご注意ください(提出する行為の代行は可能ですので、通常は葬儀社が合法的に作成された死亡届出書を役所に提出することの代行を行っています)。
埋火葬許可申請手続き代理についても、行政書士、弁護士は可能です。
役所が、死亡届を受理した際に自動的に埋火葬許可証を発行する場合は、埋火葬許可証の受領代行を葬儀社がすることも可能です。
戸籍法
第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
② 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他法務省令で定める事項
③ やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。
第八十七条 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
② 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができる。
第八十八条 死亡の届出は、死亡地でこれをすることができる。
② 死亡地が明らかでないときは死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡があつたときは死体をその交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡があつたときはその船舶が最初に入港した地で、死亡の届出をすることができる。
第八十九条 水難、火災その他の事変によつて死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。但し、外国又は法務省令で定める地域で死亡があつたときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
第九十条 死刑の執行があつたときは、刑事施設の長は、遅滞なく刑事施設の所在地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
② 前項の規定は、刑事施設に収容中死亡した者の引取人がない場合にこれを準用する。この場合には、報告書に診断書又は検案書を添付しなければならない。
第九十一条 前二条に規定する報告書には、第八十六条第二項に掲げる事項を記載しなければならない。
第九十二条 死亡者の本籍が明かでない場合又は死亡者を認識することができない場合には、警察官は、検視調書を作り、これを添附して、遅滞なく死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。
② 死亡者の本籍が明かになり、又は死亡者を認識することができるに至つたときは、警察官は、遅滞なくその旨を報告しなければならない。
③ 第一項の報告があつた後に、第八十七条第一項第一号又は第二号に掲げる者が、死亡者を認識したときは、その日から十日以内に、死亡の届出をしなければならない。
第九十三条 第五十五条及び第五十六条の規定は、死亡の届出にこれを準用する。
第九十四条 第六十三条第一項の規定は、失踪宣告又は失踪宣告取消の裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者にこれを準用する。この場合には、失踪宣告の届書に民法第三十一条の規定によつて死亡したとみなされる日をも記載しなければならない。
第五十五条 航海中に出生があつたときは、船長は、二十四時間以内に、第四十九条第二項に掲げる事項を航海日誌に記載して、署名しなければならない。
② 前項の手続をした後に、船舶が日本の港に到着したときは、船長は、遅滞なく出生に関する航海日誌の謄本をその地の市町村長に送付しなければならない。
③ 船舶が外国の港に到着したときは、船長は、遅滞なく出生に関する航海日誌の謄本をその国に駐在する日本の大使、公使又は領事に送付し、大使、公使又は領事は、遅滞なく外務大臣を経由してこれを本籍地の市町村長に送付しなければならない。
第五十六条 病院、刑事施設その他の公設所で出生があつた場合に、父母が共に届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。
⑪ 通夜の後や葬儀後に飲食を葬儀社や寺院の会館等で行わず、他の飲食店等の会場で行うときはその手配
お斎を、寺院や葬儀社のセレモニー会館で行わない場合は、はっきりと葬儀社に伝えてください。寺院や葬儀社のセレモニー会館で食事をする場合は前述したとおり、見積書を確認してください。
⑫ 葬儀関係費用の料金の支払い方法や期限を確認する
たいていの場合は内金が必要です。残金の精算も葬儀後1週間以内にするよう求められることが多いようです。なお、ローンが可能か確認してください。
これについても書面にしておくことが望ましいです。
⑬ 葬儀社等との打ち合わせ代理、法的な書類の作成代理、戸籍届けの代書と提出代理、埋火葬許可申請手続き代理は、行政書士と弁護士が可能です。
●行政書士鈴木俊行事務所では、
打ち合わせ代理、法的な書類の作成代理、戸籍届けの代書と提出代理、埋火葬許可申請手続き代理以外に、
葬儀・葬式、法要、納骨、墓、相続、遺言に関する相談も可能です。
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