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老親の介護などの扶養義務は強制か?

民法第877条第1項では、

直系血族および兄弟姉妹はお互いに扶養をする義務があると定められています。

また、民法第877条第2項では、家庭裁判所は、特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができると定められています。


(子の配偶者には法律上の扶養義務はありません。)


ところで、

扶養義務は原則として金銭扶養、すなわち扶養料の支払義務として考えられています。

(具体的には、生活費を援助したり、介護施設への入所費用を払ったりすることなど)


例外的に衣食住に関する現物の給付があり得ると考えられています。

ところで、例えば老親を引取扶養、すなわち手元に引き取って面倒を見ることは扶養義務の内容として考えられていません。


扶養義務の内容が経済的援助とは言っても、

介護費用は親の財産でまかなうことが原則。

つまり、介護用品の代金やホームヘルパーのサービス利用料は、一次的には親の預貯金や資産などから支払い、不足が生じた場合にのみ扶養義務者が負担することになります。


また、

介護そのものは扶養には含まれないので、

扶養義務の内容として介護をする義務があるとも考えられていません。


親の負担分を超えて扶養義務者が経済的援助をする場合でも、

その範囲は「扶養義務者の収入や社会的地位に応じてできる範囲内で行えばよい」とされています(鈴木禄弥著 『親族法講義』 創文社、1988年4月、236頁」「我妻栄・有泉亨・遠藤浩・川井健著 『民法3 親族法・相続法 第2版』 勁草書房、1999年7月、225頁)。


つまり、

扶養義務者自身の生活を脅かしてまで負担する必要はないということです。

「余力の範囲内」にについて争いが有る場合は、最終的には家庭裁判所の判断になります。

親の介護費用について兄弟間でトラブルが発生し、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「扶養請求調停」を申し立てることができます。


刑法的には、

親の介護を勝手に放棄することは保護責任者遺棄罪に該当する可能性が有ります。

さらに介護放棄したことにより親が死亡したり怪我を負ってしまったりした場合には、

保護責任者遺棄致死罪、保護責任者遺棄致傷罪が適用される可能性も有ります。



民法

(扶養義務者)

第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。


刑法

(保護責任者遺棄等)

第二百十八条 老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

(遺棄等致死傷)

第二百十九条 前二条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。




終活・相続・葬祭「法務」 行政書士鈴木俊行 葬儀葬祭法務特捜部

東京都杉並区阿佐谷 杉並区役所隣り





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