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納骨を拒否する「正当の理由」について

更新日:2022年9月9日

納骨を拒否する「正当の理由」について


●遺骨の埋葬蔵を拒絶する「正当の理由」について


まず、「墓地、埋葬等に関する法律」(以下、「墓埋法」という。)の 墓地管理者の応諾義務に関する条文を見てみます。



「墓地、埋葬等に関する法律」

第13条

墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。


この納骨を拒否する正当の理由は何かということを記載します。


例示として、

・新たな埋葬等を行う余地がないこと

・依頼者が墓地等の正常な管理に明らかに支障を及ぼすおそれがあること等

(引用・「新訂逐条解説 墓地、埋葬に関する法律」 第一法規刊)

が想定されています。

これは常識の範囲であろうと思います。


裁判において、正当の理由に該当するリーディングケースは、 津地方裁判所昭和38年6月21日判決によると考えられていました。


(引用・「新訂逐条解説 墓地、埋葬に関する法律」 第一法規刊)


(判旨)

1 従来から寺院墓地に先祖の墳墓を所有する者からの埋葬蔵の依頼に対しては,寺院墓地管理者は,その者が改宗離檀したことを理由としては原則としてこれを拒むことができない。ただし,右埋葬蔵が宗教的典礼を伴うことにかんがみ,右埋葬蔵に際しては寺院墓地管理者は自派の典礼を施行する権利を有し,その権利を差し止める権限を依頼者は有しない。

2 もし,寺院墓地管理者が自派の典礼を寺院墓地において行われる埋葬蔵に際し施行できないとすれば,寺院墓地はその限りにおいて共同墓地と全く同じになるわけであって,これは寺院墓地の特殊性、永年に亘って行われてきた自宗派の典礼施行という慣行を全く否定することになる点において,全国の寺院及びその教義の信奉者という多数の国民の宗教的感情を著しく害することは明かである。


との判示により、寺院墓地管理者には、典礼施行権があり、これを害することは、 納骨を拒む正当の理由となると認められた事例で、これ以降この考えがひろまりました。

整理すると、

(1) 寺院墓地(境内地墓地)の使用者(檀徒)が、改宗したからといって、納骨を拒むことはできない。 (2) しかし、墓地管理者(寺院)が行う典礼の施行を使用者は拒むことはできない。

(3) 寺院が典礼を行い得ないのであれば、公営霊園と境内地墓地の違いはなくなり、それは信者(檀家)の宗教的感情を害する。


日本において境内地墓地の形式を承継している仏教寺院においては、 慣習上の檀家制度があり、檀家はその家の祖先のため、 あるいは後年も永続していくため、自家が信仰護持しているご本尊の下で 永年眠る祖先を弔っている現状があります。 それら多くの檀家は、当然に境内地墓地内では典礼を行ってくれるものと 考えているものでしょう。 それらの檀家からしたら、境内地墓地でほかの宗派の典礼を行っていることは、 一種異様に感じることと思われます。

このように、昭和の頃から、仏教寺院において納骨を拒み得る理由の一つは、 典礼を施行する権利=典礼施行権、又は単に典礼権であると考えられていました。

しかしながら、裁判例(宇都宮地裁 平成24年2月15日判決)が 出て、最初に檀家として墓所を持って以降、 代がわり後に他宗派に宗旨替えをした場合、他の要素も勘案して、 「墓地使用権を承継した者が異なる宗派となった場合に、その者に対し被告の属する宗派の典礼の方式に従うことを求める効力があるとするのは困難であり、その者が被告の宗派とは異なる宗派の典礼の方式を行うことを被告が拒絶できるにすぎないと解するのが相当である。」 と、

自坊の典礼の施行を行うことは困難であり、 かつ他宗派の典礼を行うことを拒否できるにとどまることと判示されました。

最高裁判決ではないため、確立されたものではありませんが、 今後も同趣旨の判決がでる可能性はあります。

霊園のみならず、境内地墓地にも「墓地管理使用規定」等のルールを定め、 境内地墓地では、自坊の典礼を行う旨、また他宗派の典礼を行うことができない旨の 内容を盛り込むことが大切であろうと存じます。




終活・相続・葬祭「法務」 行政書士鈴木俊行 杉並区役所隣り


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