死後に自分の望む葬儀をしてもらうには
葬儀、供養の多様化にともない、
自分の死後の葬儀・埋葬・墓・供養の方法について、残された人に託すという傾向がありますが、
基本は、
自分が死んだ後のことを、
残された人に何かを頼んでも、
間違いなく希望どおり履行される保証はありません。
自分が死んでいる以上、自らが葬儀等を主宰することはできませんから、
頼んだことをちゃんとやってくれたかどうかのチェックもできません。
自分の葬送等のあり方の希望を伝えることができるものとして挙げられるものとして、
遺言、死後事務委任契約、民事信託、互助会契約・生前予約がありますが、
本当に、
葬儀に関して遺言、死後事務委任契約、民事信託で定めることができるのでしょうか?
互助会や生前予約は確実なのでしょうか?
・遺言
葬儀に関しては、法定遺言事項ではないことから法的な効力を持たない。しかし、付言事項としては記載することができるから、ある程度の効果はあるだろう。
ただし、遺言で祭祀主宰者となるものを指定したうえで同じ者に対して葬儀のある程度の具体的方法を指定して葬儀に関する負担付遺贈をすることは有効である。
「(例文)
第○条 遺言者は、A(昭和○○年○月○日生、住所:○○県○○市○○町○丁目○番○号)に対して、下記の財産を遺贈する。
記(省略)
2 Aは前項の遺贈の負担として、遺言者の葬儀を主宰し、葬儀後は、○○寺(○○県○○市○○町○丁目○番○号)にある○○家の墓地に埋葬しなければならない。また、○○寺には、永代供養の依頼をしなければならない。」
この負担付遺贈では、受遺者を合わせて祭祀承継者として指定することが望ましい。
とはいえ、遺族の方が遺言の内容を遺言者の死後すぐに確認するとも限らないし、その際は葬儀には間に合わないことにもなりかねない。遺言に記載したとしても、その葬儀の記載に後になって気づくことになっては意味がないということ。遺言は、そもそも遺言者の死後に発見されなかったり、無効な遺言であったり、有効な遺言であっても遺言に書いたことを無視されたりする可能性もあるから注意が必要である。つまり、葬儀について遺言に記載するという方法は、必ずしも適した方法とは言えないことになる。
・死後事務委任契約
死後事務委任契約は、遺言と異なって法定遺言事項(財産の処分など)以外において、法的拘束力が生じることが特徴。これには埋葬や葬送をある程度どのように行うかという事項も含まれている。ただし、葬儀に関して相続人に死後事務委任契約の内容と異なる考えがある場合には、例えば、喪主(あるいは祭祀承継者)との関係、相続人間の遺産分割問題、葬儀費用負担問題でトラブルになりかねない可能性を否定できない。そもそも死後事務委任契約が履行されないことも有り得る。
・民事信託(家族信託)
一人暮らしの高齢の方が仮に認知能力が低下しても、自宅の処分や生活費用の支出を親族の誰かが行えるように家族信託するケースが多い中、葬儀等の具体的方法をある程度指定したうえで葬儀費用も信託財産から賄ってもらいたいと思っているはずともいえる。
自益信託の場合の受益者の葬儀費用について、葬儀等の具体的方法をある程度指定したうえで、信託の終了事由を「受益者死亡後の当初の受益権は誰が持つかを契約で決めたうえで、当初の受益者が死亡し、受益者の葬儀費用を支払ったとき」とするか、受益者が死亡して信託が終了しても「自益者の葬儀費用を残余財産から支払う」という条項を入れておけばいいのではないだろうか。こうすれば、実質的に、委託者兼受益者の死亡後の葬儀を施行して、その葬儀費用を信託財産から支払うことができると考えられる。
ただし、葬儀に関しては、受託者と喪主(あるいは祭祀承継者)との関係、相続人間の遺産分割問題、葬儀費用負担問題でトラブルになりかねない可能性を否定できない。
・葬祭互助会や葬儀の事前契約(予約)
互助会とは、加入者が毎月一定額の掛金を前払金として払い込むことにより、冠婚葬祭の儀式に対するサービスが受けられるというシステム。また、葬儀社による生前割引契約などがある。
本人が、生前に希望の葬儀内容を互助会系葬儀社や一般の葬儀社と、事前契約をしたり、毎月掛金を積み立てたりすることから、費用や葬儀内容が明確で安心であると考えられているが、これらの事前契約がなされていたことを本人死亡後に親族が知らなかった場合には全く意味をなさないことになる。その場合、事前に払った費用などが無駄になってしまうばかりか、本人の希望の葬儀とはならない可能性があることが否定できない。遺族がこの事前契約を知っていた場合でも、それを承服しない場合も同様。
●つまり、希望どおりの葬儀をしてもらえるかどうかについては、
遺言、死後事務委任契約、民事信託、互助会・葬儀の事前契約(予約)のいずれをもってしても、
100パーセント確実な方法はないということでしょう。
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終活・相続・遺言・墓・葬儀「法務」
行政書士鈴木俊行
「終活・葬祭法務ネットワーク協会代表」
東京都杉並区阿佐谷
杉並区役所隣り
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