死亡届を誰が出すのか? 遺体安置施設に放置された孤独死体 漂流する遺体と遺骨<行政書士鈴木俊行>
- 鈴木俊行
- 2023年2月27日
- 読了時間: 4分
更新日:4月17日
死亡届を誰が出すのか? 遺体安置施設に放置された孤独死 漂流する遺体と遺骨
身寄りのないおひとり様が、亡くなってから火葬まで一年もの長い間、遺体安置場で冷蔵されているという事案があるようだ。
福祉事務所など行政の事務手続きが適切に引き継がれなかったというケースもあるが、問題の根幹には更に深刻な問題がある。
都市部は死者数に比して遺体安置場の数が少ない。
多死社会にあって遺体安置庫が回転しないことで葬儀社も大変なところが有る。
遺体安置には費用も掛かるし葬儀社の負担は無視できない。
福祉事務所内での引継ぎミスがあったとしても、どうして1年も放置するに至ったのか。
死亡届出人を定めた「戸籍法」。
法律上、通常は死亡届人の署名がされた死亡届が役所に提出されて、はじめて埋火葬ができる。
まったく身寄りのないおひとり様が死亡した場合、誰が死亡届をするのか。
●病院で死亡
病院長が死亡届を役所に提出。
●高齢者施設で死亡
警察が遺体を引き取り、監察医務院や嘱託医が検視をして、事件性がなければ葬儀社に遺体が移送され、施設長が死亡届を役所に提出。
●屋外で死亡
警察が遺体を引き取り、監察医務院や嘱託医が検視をし身元調査をする。身元不明の場合、警察が死亡届出に代わる通知を役所に行う。
●自宅で死亡
警察が検視をして事件性の有無と身元調査をする。遺体は警察署に移送され、監察医(または嘱託医)によって検案がされ、死亡推定日や死因が特定される。監察医の検案が終了すると遺体は葬儀社に引き取られ安置される。
さて、自宅死亡の場合、誰が死亡届を提出するかという点である。
戸籍法
第八十七条 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
② 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができる。
第九十三条 第五十五条及び第五十六条の規定は、死亡の届出にこれを準用する。
第五十六条 病院、刑事施設その他の公設所で出生があつた場合に、父母が共に届出をすることができないときは、公設所の長又は管理人が、届出をしなければならない。
身寄りがない人が自宅で孤独死した場合の死亡届出人は、家主、地主、家屋管理人、土地管理人、または後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者である。
第八十七条1項及び第九十三条による第五十六条の準用による方は届出義務のある方だが、第八十七条2項は届出資格が有るというだけで義務ではない。
自己所有の建物に住んでいてそこで死亡した場合、家主は届出義務者だが、家主とは孤独死をしたその方そのものだ。
ましてや自己所有の土地建物の場合は地主も自分である。
自己所有のマンションの場合の管理人(不動産会社など)が届出をしてくれるだろうか。
賃貸借建物の場合、家主や地主はそう簡単に届出を引き受けてくれないだろう。
ましてや、おひとり様の場合は同居人もいない。
相続人を探し、死亡届出人を誰が引き受けてくれるのかに苦心しているうちに時間ばかりが過ぎる。死亡届が提出されなければ火葬はできないことから遺体はいつまでも葬儀社の冷蔵庫で安置される。
それにしても、
考えれば考えるほど、調べれば調べるほど、身元の判明ができない場合、死亡届出人は誰がなっているのだろう?
という疑問は払拭されない。
しかも、
身元不明のまま、行旅病人及行旅死亡人取扱法に基づき自治体によって仮の名前や番号で火葬されてしまうと、その人は、戸籍上は生き続けるのだ。
身元が分からない以上、戸籍の死亡届出そのものができないからだ。
葬送・供養方法の大きな変化により、手元供養や改葬・墓じまいが増えているが
その遺骨の管理等にも墓地埋葬法の隙がある。
改葬には役所の許可が必要だが、墓じまいをして手元供養や散骨をする場合には役所の許可はいらないことになっている(自治体によって取り扱いが異なる場合がある)。
改葬と異なり墓じまいの場合、墓から取り出したその遺骨がその後何処に行くのか管理されていないのだ。
さらに、
遺骨を納骨せず、遺骨を加工して手元供養とした場合、その遺骨加工品をいつか処分しなくてはならない場合、墓地に納骨しますか? 散骨しますか? あるいはゴミに捨てるのでしょうか?
墓じまいをして手元供養していた遺骨は、墓園から埋蔵証明等をもらっておかないと、二度と納骨できなくなる。
やはり散骨しますか? ゴミとして捨てますか?
遺骨が漂流してしまって、
その遺骨、本当は誰なのですか?
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